下仁田のクズねぎ

くずねぎ／屑葱とは、箱に詰められないような細い下仁田ねぎのことで、主に、夏の２回目の植え替え後、大きく育つことなく、逆に、植え替え時よりも小さくなってしまったSSサイズの下仁田ねぎ。

帰農したての頃 （２００６～７年頃の話）、地元の人がコンテナ持参で、「クズねぎ、ちょーだい」 とやってきて、ごっそり持って行ってしまうことが頻繁にあって、すごくショックを受けた。

自分たちが作ったものをタダで持っていかれる屈辱に、カネにならないものをカネにするのがプロだろ、売れないものを売ってナンボ、と自分にハッパをかけていろいろ考え、「規格外」 としてネット販売して換金できるようにした。

当時は、まだ規格外の野菜の販売は珍しかったから、親たちはそんなもん （他人にくれてやるようなもん） でお金取るんじゃ申し訳ないとこぼしていたし、地元のクズねぎ狙いの人には恨まれたと思う。

クズねぎだって小銭になれば、クズではない。
自分もどちらかといえば人間の屑のようなものだから、職業として太いのを作るが、クズねぎに寄せる気持ちも少なからずある。

ちなみに、クズが濁ればグズだ。漢字だと屑と愚図で別もんになるが、カタカナだとホクロがあるかないかの双子のようだ。
先ほど、自分もどちらかといえば人間のクズのようなものだ、と書いたが、似たようだけど、愚図はダメだ。

クズだって小銭になって戦力 （微力ながら） になることがわかったら、今度は、屑ではなくそれなりの名が必要だな、と頭をひねった。
太った下仁田が殿様なら、極細の下仁田は下級侍の三一 （さんぴん）、「下仁田さんぴんネギ」 で売り出そうと考えた。（２００８～９年頃の話）
が、群れるのが苦手な内向型人間で、ポツンとピン農家のような自分がブログで名付けたところで賛同する人間など現れるわけはないので、そのまま立ち消え、現在もクズねぎは相変わらずクズねぎの名だ。
でも、愚図ネギよりは、いい。