以前、町道の拡張工事のため電柱が移動になり、ウチの下仁田ねぎの畑のわきに立った。
そのせいなのかわからないが、次の日、電柱のそばでモグラが死んでいた。
亡骸をネギのそばに少し移動し、写真を2枚ばかり撮った後、埋めてやるため小さいスコップを取りに家に戻るとき、ヤツのことが頭に浮かんだ。
ヤツとは、5~10年くらい前からこの辺に居ついて、頭上でくるり廻っているトンビのことだ。
いつも 「ピーヒョロロ」 という鳴き声を聞くたび、食い物はあるのか心配だったし、いったい何を食べて生きているのか不思議だった。
海辺のトンビだったら、魚の死骸にありつくのは容易に想像できるが、ここは海から遠く離れているし、エサになりそうなネズミなどの小動物は真昼間ではほとんど見ない。
2~3年ほど前、山の畑でトンビとカラスが数羽でやかましく争っていて、その下には動物の死骸の一部があったが、結局、カラスに追い出されていた。
自分の心情的に、群れるカラスより群れないトンビに気持ちを寄せがち、というのもあり、食っていけてるのか常に気になっていた。
だから、このモグラはヤツにプレゼントしたい、とはいえ、いつまでもモグラの死骸を畑においておくのもナンなので、午前中いっぱいはそのままにして、うまくトンビが見つけてご馳走になれば良し、見つけられなかったら勘どころの悪いトンビが馬鹿、と自分で取り決めて別の畑へ仕事に向かった。
――で、結局、午後、電柱の脇にモグラを埋めて手を合わせた。
数日前、ネギ植えでくたびれて早めに就寝していたところ、カミさんに起こされる。
ネズミが出たと大騒ぎしていたが、小ネズミだったので、ハエはたきで仕留め、家の外に放り投げ、寝る。
翌朝、家の前の町道に昨晩の小ネズミ死骸があったので、車に踏まれてタコせんべいみたいになって道路に引っ付くのもどうかと思い、ホウキで端に寄せるつもりが畑まで飛んでしまった。
今度こそ、トンビに食ってほしかったが、乾いた畑の土とネズミのグレー(ネズミ色)が馴染んで、目立たなくなってしまった。
案の定、エサ察知能力に乏しいあのトンビには発見されず、ご馳走である小ネズミはそのままだった。
その日の晩、前の小ネズミよりすこし大きめの小ネズミが出て、またハエはたきを構えたが、今度のは動きが速い。
ハエはたきを二刀流・武蔵のように2本待って、玄関まで追い詰め、仕留める。
翌朝、2匹目は目立つ場所にと、町道わきにある石垣の上の白いコンクリート部分に、わざわざ置く。
――で、結果は、一匹目の小ネズミは2日目の晩にタヌキかネコが持って行った (畑に足跡があった)。
2匹目の小ネズミは、一時間くらいで無くなっていた (たぶん、カラス)。
おれからのトンビへの差し入れは、またしても失敗した (まったく面白くないトンビだ)。
以来、春の(下仁田)ネギ植えの最中、頭上で 「ピーヒョロロ」 と聞こえても、「うるせー馬鹿トンビ」 と無視して作業を続けた。
ということで、ひとつ前の雨の日に書き出し、ちょびちょび書き足して長くなってしまったが、トンビからしたら大きなお世話 というだけの話。
※ 画像は、害虫による噛み傷で、トンビがくるりと輪をかいたようにカーブした葉の下仁田ネギ苗。(モグラと下仁田ねぎの画像は、記事にすることもないかと思い、ずいぶん前に削除してしまった)