帰農した最初の頃、山の上の畑で作業していたら、お婆さんがトボトボ歩いてきて、お菓子やら飲み物をくれた。
すこし話をしたら、山の上にポツンと一軒あるお寺のお婆さんで、子供のころから知っていた人だった。
その頃、すでに90歳ちかかったが、受け答えもしっかりしてて、千葉の娘さんの所と下仁田を行ったり来たりしているとのことだった。
その後、暑い夏の日などは、アイスクリームや冷たい飲み物をもらったり、何度か差し入れを頂いたが、途中からわたしの弟 (お婆さんの孫の住職と同級生) と間違えるようになった。
あるとき、お寺ちかくの葱畑で作業をしていたら、携帯電話が鳴り、実家作業場にお客さんが急に来て、アタシだとわからないからすぐに戻って来てくれ と お袋から連絡があった。
作業を止め、軽トラに乗りこんで発車しようとしたら、お寺のお婆さんがいつものようにお菓子をもってやってくるのが見えた。
うわぁ、どうしよ・・ と思ったが、すぐさまドア窓を下げ、「すみません!急いでいるので!」 と車を走らせた。
お婆さんのとても落胆したような顔から、わたしが差し入れを迷惑がって逃げるように去ったと思われたかなぁ・・・ と、罪悪感めいたものを感じ、それがしばらく尾を引いた。
それ以来、お婆さんの差し入れはパッタリなくなった。
お婆さんの姿を見ることもほとんどなくなった。
先日、そのお婆さんが亡くなったことを知った。
101歳だったそうだ。
合掌。
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