メニュー 閉じる

店頭販売農家・その4

 イメージ 1
 
 田舎にもどった当初――、
 野菜を農産物直売所に持っていき、そこにお客さんがいれば、
 反射的に 「いらっしゃいませ~」 と声が出た。
 
 が、土にまみれ、商人からだんだん農民になっていって、
 「いらっしゃいませ~」 の言葉は消えた。
 
 で、先日、(群馬) 県内の、伊勢崎市にある、「APITA」
 というチェーン・ストアの 「おいしい群馬・再発見」 という物産展に、
 本場・下仁田ねぎで参戦したわけだが、あの頃の (渋谷で服屋だった頃の)、
 「いらっしゃいませ~」  がスムーズに出ない・・・。
 
 たとえば田舎というところは (とくに農家のオジサンとか)、
 「俺んちなんか一個も売れねぇー、ワッハッハッ!」 というように、
 己のダメさ加減を笑い飛ばす (控え目とは質がちがう) のがカッコいいような風潮があって、
 (もちろん自分はそれには馴染めないが) 、知らず知らずのうちに、そういった伸び代のない
 というか商魂のない人間に染まっていくことを危惧していたが、
 接客はおろか、「いらっしゃいませ~」  ひとつ、滑らかに出ないということは、
 やっぱりそういうことの表れなのかなぁ・・・とちょっと気持ちが淀んだ。
 
 だがしかし、出店業者の皆さんの、派手な売り文句、流暢なセールストークを聞いていたら、
 だんだん昔の感覚がよみがえってきて、とても良いリズムで接客できるようになり、
 最終日には出店会場で一番声を出した一人になってしまったくらい、充実した3日間となった。
 
 それもこれも隣りのブースの女性のおかげだ。
 (まさに、“鬱は移る”  とか、“腐ったミカン” の逆パターン)
 彼女の無駄がなく嫌みのないトークとすばらしい接客態度はおおいに感銘を受けたし、
 彼女のポジティブな人柄のおかげで、わたしたちブースまわりはとても楽しく、
 レジ担当のAPITAの女性スタッフも含んでひとつのチームのようだった。
 
 隣りのブースのヒトがトイレその他で店を空ければ、代わりに接客したり・・・。
 大げさに言えば、自分のところの商品もさることながら、
 隣りの商品をいっぱい売ってあげたい気持ちになった。
 
 で、右隣りの彼女のブースだけでなく、左隣りの梅干し屋さんも
 ブースに居なけりゃ代わりに接客した。
 
 「いらっしゃいませ~」 と声を上げ、試食用の梅干しを指し示しながら、
 「どうぞ、よかったら、ご試食くださ~い」 というところを、
 むかしの服屋のときの習慣で、「どうぞ、よかったら、ご試着くださ~い」
 って言ってしまうのだ。
 
 「ご試食」 が 「ご試着」 になってしまうのだ・・・。(それも何度も・・・)
 
 われながら、梅干し着させてどうすんだ・・・・、
 と、その都度、思った・・・。
 
 
 
.
Posted in 百姓二揆(ヒャクショー・ニッキ)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です