春――三月――
薄氷をくだいて
おらの田んぼを打った
めつぽー冷こい水だ
足が紫色に死んで居やがる
今日は初田打
晩には一杯飲めるバーと気付いたので
おらあ勇気を出した
ベッー!
手に唾をひつかけて鍬の柄をにぎつた
だがやつぱりだめ
手がかぢかんで動かない
ちきしよう
おらあやつぱり小作人なんだ
薄氷をくだいて
おらの田んぼを打った
めつぽー冷こい水だ
足が紫色に死んで居やがる
今日は初田打
晩には一杯飲めるバーと気付いたので
おらあ勇気を出した
ベッー!
手に唾をひつかけて鍬の柄をにぎつた
だがやつぱりだめ
手がかぢかんで動かない
ちきしよう
おらあやつぱり小作人なんだ
それから夏が来た
煮えかへるやうな田の中で
俺達は除草機の役をする
十日も続く 指の先から血が滲む
其のいたいつたら
ちきしよう!
地主のうちの娘つ子が通る
メンコイ顔した娘つ子が
町の女学校へ行くんだ
柄のデッケイこんもり傘だ
涼しさうなパラソルだな 俺んもな
妹の野郎がおふくろにしやべつた
馬鹿野郎 だまつて仕事しろ
俺は呶鳴つた したらみんなだまつた
また今年も半作だぞ
親父が暗い顔で言った
地主の野郎は今頃扇風機の三つかけて居やがるだらう
ああ暑くて死にさうだ!
おらあやつぱり小作人なんだ
煮えかへるやうな田の中で
俺達は除草機の役をする
十日も続く 指の先から血が滲む
其のいたいつたら
ちきしよう!
地主のうちの娘つ子が通る
メンコイ顔した娘つ子が
町の女学校へ行くんだ
柄のデッケイこんもり傘だ
涼しさうなパラソルだな 俺んもな
妹の野郎がおふくろにしやべつた
馬鹿野郎 だまつて仕事しろ
俺は呶鳴つた したらみんなだまつた
また今年も半作だぞ
親父が暗い顔で言った
地主の野郎は今頃扇風機の三つかけて居やがるだらう
ああ暑くて死にさうだ!
おらあやつぱり小作人なんだ
渡り鳥が来て秋に成つた
それからすぐに又冬が来た
親父がまた言つた
今年も半作だぞ・・・・・・
然し俺達は今迄の小作人では無かつた
村では去年にこりて
組合を作ることにした
下村の奴等が仲間になれと云つて来た
だが俺達は
一番しつかりした組合
全農の仲間入りをした
全国農民組合新潟県連合会南部地区西南部小地区
恐しい長い名前だ
おらあ何度もケーコしたが
まだおぼえられねい
そして演説会があつた、俺は聞きに行つて
新しい言葉をおぼえた 「何たる矛盾ぞ」
俺は早速帰つて来て呶鳴つた
働く者は貧乏する!
遊んで居やがる地主は金持だ!
「何たる矛盾ぞ!」
それからすぐに又冬が来た
親父がまた言つた
今年も半作だぞ・・・・・・
然し俺達は今迄の小作人では無かつた
村では去年にこりて
組合を作ることにした
下村の奴等が仲間になれと云つて来た
だが俺達は
一番しつかりした組合
全農の仲間入りをした
全国農民組合新潟県連合会南部地区西南部小地区
恐しい長い名前だ
おらあ何度もケーコしたが
まだおぼえられねい
そして演説会があつた、俺は聞きに行つて
新しい言葉をおぼえた 「何たる矛盾ぞ」
俺は早速帰つて来て呶鳴つた
働く者は貧乏する!
遊んで居やがる地主は金持だ!
「何たる矛盾ぞ!」
~ 貧農のうたへる詩 / 長澤佑
◇
わたしも、「何たる矛盾ぞ!」 とばかりに、
こころの叫びを書きたいが、心身の疲労がひどくて、
頭が働かない。きちんと伝わるように書けない。
こころの叫びを書きたいが、心身の疲労がひどくて、
頭が働かない。きちんと伝わるように書けない。
年が明ければ、いやでもヒマになるだろうから、
こころの内をぽつりぽつり吐露できたらと思う。
こころの内をぽつりぽつり吐露できたらと思う。
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