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さぶしい好意

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 そのたばこ屋はお寺のとなりにある
 美しいかみさんがいて
 たばこの差出し方がたいそうよい
 上品な姉と弟の子供がいて
 いつかなぞはオルガンをひいていた
 それに
 顔つきのおとなしい血色のいい主人がいる
 もっと立派なたばこ屋は千軒もあろう
 そして おれもたばこを
 いつもいつもよその店で買ってしまう
 しかしおれは
 そのお寺のとなりのたばこ屋を愛している
 そのちいさな店に
 おれのさぶしい好意を寄せている
 
                         「たばこ屋」/中野重治
 
        ◇
 
 たばこをやめて7年が経つ。
 
 この詩の、大人の男の思いがグッとくる。
 
 思わず、渋い顔してたばこをふかし、
 溜息のようなケムリをはき出したくなるほどだ。
 
 ※ BGMにはコレ、Summertime – Albert Ayler
  http://www.youtube.com/watch?v=e5fPmdCjmHc
  アイラーのサックスがむせび泣く・・。
 
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Posted in 音楽/言葉

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