メニュー 閉じる

新鮮な外部との接触

 イメージ 1
 
 その窓は閉ざされたままだった
 中には誰もいなかった
 机の上はきちんと片づいていた
 読みさしの本がおいてあり
 インクの壺はからからに乾いていた
 これから何かがはじまるようにみえた
 もう終わったあとかもしれなかった
 とにかくひっそりかんとしていた
 壁には古びた人物像の
 眼だけが大きくかがやいていた
 それに追い立てられるように
 窓枠のすきまから覗いていたてんとう虫は
 向きをかえ背中を二つに割って
 燃えるひかりの中へ飛び去った
                                       木下夕爾/「内部」
 
 
.
Posted in 音楽/言葉

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です