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最初、
「カネが増えてしょうがねェのぅ」 (ねェのぅ=ないでしょう)
って言っているのかと思った。
「えっ?」
わたしの聞きとれていない様子に、
老人は、もう一回、言った。
「ハネが生えているようだのぅ」 (ようだのぅ=ようだね~)
◇
わたしは、農家を飛びだして商人となり、
商人から農民に戻りました。
なので、農民でありながら商人のようなところがあるのです。
土日など、家の前から見える 『道の駅しもにた』 の駐車場に車が多いと
もう いてもたってもいられず、『道の駅』内、直売所にスッ飛んでゆきます。
血が騒ぐのです。
売れたモノをすばやくチェックして、すぐさま家にもどってモノをフォローします。
売れるときは一気に売ってしまったほうが良い。売り逃しはもったいない。
そんな気持がわたしを走らせるのです。
駐車場から直売所まで、ネギをかかえたまま小走りするのです。
わたしのそんな姿を、顔見知りの農家の爺さんが、
「ハネが生えているようだのぅ」
と言ったのです。
詩人だな、と思いました。
そういえば、2週間ほどまえ、
セニョール・サンタマリアに、「くたくたじゃないスか~ァ」
と言われてガックリきたキオクがありますが、
(2/4日分、「くたくたじゃないスか」参照)
ここ下仁田の年輩のヒトからすれば、
わたしは、はばたいて見えるのです。
下仁田の町で、空を飛んでいる農民がいたら、
それは、わたしです。
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