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きのうのつづき――。
だあれもいない山のなかの、その懐である森林のなかにいると、
しばしば怖いくらい底なしの沈黙に襲われるときがあります。
それはまるで宇宙におけるブラックホールのように、
すべてを呑みこんでしまう深い沈黙なのです。
わたしは、その山の沈黙が、わたしのちっぽけな怒りを
まるごと吸いとってくれるような気がしたのです。
とまァ、大げさにいったらそんなところですが、
要は、気晴らしというか、ウサ晴らし的に、
いっちょう山篭りならぬ山登りでもしてみっか、
てな具合に思ったワケです。
で、
正月3日、人びとでにぎわう神社方面とは
反対の方向へと車を走らせたのです。
行き先は、長野県との県境にある “熊倉峰” というマイナーな山。
以前、ネットで見た、この山の中腹から撮ったという “荒船山” 画像が、
ちょっと新鮮な角度だったので、雑草の枯れる冬に登ってみようと
ひそかに思っていたのでした。
だから、一石二鳥っちゃ一石二鳥なのでした。
(ちなみに、わたしの下仁田周辺のデザインを感じる山コレクションは
こちら、http://www.shimonitafarm.com/fukei.htm)
ところどころ、雪の残る山道をいけるとこまで車で登り、
雪がアイスバーンになっている手前で車を降り、
ときおり、ツルリとすべりながら登山口まで歩きました。
踏み跡程度の登山道が、重い感じの杉林のなかに伸びていて、
ちょっと駆け足気味に登っていくと、途中でうっすらながら道が分岐していました。
わたしは、一瞬考えたのち、荒船山方面の右に進路をとりました。
息を切らしながら、暗い杉林をぬけ、明るい落葉樹林帯の斜面にでかかったとき、
足元に派手なジュースの空き缶とペットボトルが並んでいるのを見つけました。
こんなへんぴな山にもゴミを捨てていくマナーの悪いハイカーがいるのか、
と、なんとも残念な気持になりながら、先へ進むと、先ほどよりも多い、
5、6本のハデな飲み物の容器がきれいに並べてありました。
その並べられた容器の中央には、
茶色く枯れた花が添えられていました・・・。
自分の中から突き上がってくる怒りを鎮めようと、山に登ったわたしですが、
新年そうそう、気分をドーンと落としながら、そそくさと山道を下りました。
※画像は、その付近から撮った、荒船山。
飲み物&お花が添えてある、ということで、そういうことなんでしょうが、
だあれもいない山奥で、そういうのに遭遇した日にゃあ、
どうしようもなくブルーになるのですよ。なんとかならんもんでしょうか。
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