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わたしがイナカに引っこんだとき、
町には、“東京で事業に失敗してノイローゼになって戻ってきた男”
という噂があったそうな、と役場に勤める幼なじみから聞きました。
(世間やテレビなどで、イナカのヒトといえば、“親切であたたかい” というイメージですが、
その裏には、テレビでは映らない閉鎖的でダークな面が潜んでいるのです)
そんなあまり愉快ではない噂を知ることができたのも、
その噂を払拭することができたのも、
去年の今日、NHKの 『小さな旅』 という番組が放送されたからです。
わたしは、番組で下仁田町に暮らす人として好意的に取りあげて頂きました。
ディレクター、カメラさん、その他スタッフの方々、あらためて感謝いたします。
あれから一年、状況は大きく変わったわけではありませんが、
近所の往年のレディースのハートはガッチリつかんだらしく、
夏、ひとりでネギの植え替えをしているときなど、
何度か、カキ氷やらソーダ水やらの差し入れを頂きました。
「もう4、50歳、若かったらなぁ~」 とちょっと心中でつぶやきながら。
つぶやきと云えば、あのときディレクターさんがポツリと、
「名前が知れ渡っている町だから潤っていると思ったら、寂れているんでビックリした」
というつぶやきが、未だ、わたしのなかに宿題のように残っています。
とはいえ、撮影時、まだ下仁田のコンニャクに自信がありませんでした。
しかし、いまでは、下仁田のコンニャクに誇りと愛情をつよく持っています。
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