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『感情的な唄』

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       学生がきらいだ

       糊やポリエチレンや酒やバックル

       かれらの為替や現金封筒がきらいだ

       備えつけのペンや

       大理石に埋ったインクは好きだ

       ポスターが好きだ好きだ

       鳩

       極端な曲線

       三輪車にまたがった頬の赤い子供はきらいだ

       痔の特効薬が

       こたつやぐらが

       井戸が旗が会議がきらいだ

       邦文タイプとワニスと鉄筆

       ホチキスとホステスとホールダー

       楷書と会社と掃除と草書みんなきらいだ

       脱糞と脱税と駝鳥と駄菓子と打楽器

       背の低い煙草屋の主人とその妻みんな好きだ

       バス停留所が好きだ好きだ好きだ

       元特高の

       古本屋が好きだ着流しの批評家はきらいだ

       かれらの鼻

       あるいはホクロ

       あるいは赤い疣あるいは白い瘤

       または絆創膏や人面疽がきらいだ

       今にも泣き出しそうな教授先生が好きだ

       今にも笑い出しそうな将軍閣下がきらいだ

       適当な鼓笛隊

       正真正銘の提灯行列がきらいだきらいだ

       午前十一時にぼくの詩集をぱらぱらめくり

       買わずに本屋を出て

       与太を書きとばす新聞社の主筆がきらいだ

       やきめしは好きだ泣き虫も好きだ建増しはきらいだ

       猿や豚は好きだ

       指も。

                             感情的な唄/岩田宏

       この詩は
       疣 (イボ) だの 瘤 (コブ )だの 人面疽 (ジンメンソ) だの
       読みの難しい漢字がいっぱい出てくるから きらいです
       けど、
       駄菓子と打楽器、正真正銘の提灯行列、やきめしと泣き虫など
       口に出して読んだときの コトバの踊り具合が 好きです

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Posted in 音楽/言葉

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