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ぼくは とどのつまり 何になるのか
時計の音とともに 光と物質は
うすめられてゆくが ぼくも
いたずらに幻をひろげていって
自滅するのみか もともと
無理につれ出された世界なんだ しぶしぶ
生きて いやいや死ぬのか
腐敗 分解 生成 濾過をへて
ねがわくば 水にならんことを
水になって 田舎の停車場の軒から
つららになって ぶらさがり
怪物の歯のように 地面をさしていたいものだ
霧となって渦をまき 冬のあいだ
北むきの椅子にすわりつづけて
「冬へ/北村太郎」
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