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月夜の晩に ボタンが１つ
波打際に 落ちていた
それを拾って 役立てようと
僕は思った わけではないが
なぜだかそれを 捨てるに偲びず
僕はそれを 袂（たもと）に入れた
月夜の晩に ボタンが１つ
波打際に 落ちていた
それを拾って 役立てようと
僕は思った わけではないが
月に向かって それは放れず
浪に向かって それは放れず
僕はそれを 袂に入れた
月夜の晩に 拾ったボタンは
指先に沁み 心に沁みた
・・・・・・
「月夜の浜辺／中原中也」
