車を走らせるようになって気づいたことは、
『車ってのは、実におおくの生き物を “ぺしゃんこ” にしてしまうンだな~』
ということです。
(ちなみに写真は、昼間っから眠りほうけている、ちび犬です。生きています)
犬猫はもちろん、野うさぎ、へび、たぬき! など、
ふだん、なかなか お見かけできない生き物も 路上で出あえます。
(もちろん、体の一部、または大部分が平面になっていますが)
先日、例によって山道を走っていたときでした。
『えっ?! カメ?・・・・・・』
オレンヂのセンターラインの上に “カメ” がいたのです。
石のまちがいじゃあないか、と確認しようとしましたが、
うしろに 軽自動車がくっついているのが見えたので、
スピードを緩めることなく、通過してしまいました。
あたまの裏ッ側に、さきほどの光景がフラッシュバックしてきて、
『ひき返すか・・・』
と、胸中で迷っているうちに、道が狭まり 一車線になってしまいました。
うしろには、あいかわらず、ブンブンうるさいハエのような軽自動車が 続いています。
『どうする、オレ・・・ひき返すのかァ・・・』
早くジャッヂしないと、ドンドン離れてしまう訳ですが、
フシギなことに 距離がひらくほど、
『アレは頑固な石ではない、迷えるカメだ!』
と確信めいたものになったのです。
車がビュンビュン通りすぎる中を、亀が首をすくめながら固まっている映像が
あたまの中をチラリ、かすめましたが、同時にべつの考えが フット頭によぎりました。
わたしの後で、「はやく!はやく!」と云わんばかりの軽自動車は
所謂、ワカモノが運転しています。
そして、ここはカーヴの多い山道――。
“カーヴ”、 “ワカモノ”、とくれば、当然、“曲がりきれない” 。
“どうして、19歳はカーヴを曲がりきれないのか?”
という記事のタイトルみたいなものが頭をよぎったのです。
わたしは大人ゆえ、若さ爆発の抑止力にならねばなるまい、
ワカモノの前に立ちはだかり、スピード・ストッパーにならねばなるまい、
とヘンな正義感が湧いたのです。
じゃあ、カメはほったらかして 甲羅ごと道路にプレスされてもいいんかい?
というご意見もありましょうが、
カメとワカモノの命を天秤にかけた場合、
亀は万年といいますから、おそらくタップリ生きている確率が高い。
それに比べ、ワカモノのほうは、せいぜい20年程度、
人生の旨味や酸っぱさなど、とうてい知らないでしょう。
ということで、ワカモノに軍配!ってワケですが、
本音の部分をチラッと書いてみれば、
もし、わたしが、カメ救出のため、左にウインカーを出して 路肩に車を寄せたとすれば、
ワカモノは 我が物顔で、
『ハハン、オレ様のあおりにビビッたな。つか、おせぇーんだよ。ったく、ちんたらマジうぜぇ!』
などと思われるのがオチでしょう。
それは、とってもおもしろくない。
無謀や横暴にかんたんに屈するほど、わたしは落ちぶれてはいない。
意地でもキープ50(法定内速度+10)で立ちはだかってやろうじゃないの、
という気持が前面に出たのでした。
かくして、わたしとワカモノは、ひとけのない山道を
まるでランデブーのように ピッタリ寄り添いながら、走ったのでした。
つづく。